「骨の老化」と聞くと、多くの方は高齢になってから始まるものだと思われるかもしれません。
しかし実際には、骨の老化は想像よりも早い段階から始まっています。
骨は私たちの体を支える大切な組織であり、歩く・立つ・座るといった日常動作だけでなく、内臓を守る役割も担っています。そのため骨の健康は、健康寿命や生活の質(QOL)に大きく関わっています。
近年では、平均寿命が延びる一方で、骨粗鬆症や骨折によって介護が必要になる方も増えています。
いつまでも自分の足で歩き続けるためには、骨の老化について正しく理解し、早めに対策を始めることが重要です。
今回は「骨は何歳から老化するのか」というテーマについて解説します。
骨は常に生まれ変わっている
まず知っていただきたいのは、骨は一度作られたら終わりではないということです。
私たちの骨は、古くなった骨を壊して新しい骨を作る「骨代謝(骨リモデリング)」を繰り返しています。
骨を壊す働きをする細胞を「破骨細胞」、新しい骨を作る細胞を「骨芽細胞」と呼びます。
健康な状態では、この二つの働きがバランスよく保たれており、骨の強さやしなやかさが維持されています。
つまり骨は、常に新陳代謝を繰り返している生きた組織なのです。
骨量のピークは20〜30代
骨の老化を考えるうえで重要なのが「最大骨量(ピークボーンマス)」という考え方です。
骨量は成長期に増加し、20〜30代頃に人生で最も高い状態になります。
この時期に十分な骨量を獲得できるかどうかが、将来の骨粗鬆症リスクに大きく影響します。
骨量のピークを迎えた後は、加齢とともに徐々に減少していきます。
特に女性では閉経後に女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少するため、骨量が大きく低下することが知られています。
そのため骨粗鬆症は高齢者だけの病気ではなく、若い頃からの生活習慣が将来の骨の健康を左右するといえます。
骨の老化は30代頃から始まる
一般的に骨量は20〜30代でピークを迎え、その後は少しずつ減少していきます。
つまり骨の老化そのものは30代頃から始まっていると考えられます。
ただし、この時点で自覚症状が現れることはほとんどありません。
骨は痛みを感じにくく、骨密度が低下しても日常生活に大きな変化がないため、多くの方が気づかないまま年月が過ぎていきます。
そして気づいた時には、
- ・身長が縮んでいた
- ・背中が丸くなっていた
- ・軽い転倒で骨折した
- という状態になっていることも少なくありません。
骨粗鬆症が「沈黙の病気」と呼ばれる理由もここにあります。
骨密度だけでは骨の強さはわからない
以前は骨の強さを判断する際、骨密度が重視されていました。
もちろん骨密度は非常に重要な指標です。
しかし近年では、骨密度だけでは骨折リスクを十分に評価できないことがわかってきています。
実際に、骨密度がそれほど低くないにもかかわらず骨折を起こす方も少なくありません。
そこで注目されているのが「骨質」という考え方です。
骨質とは、骨の内部構造やコラーゲンの状態、骨代謝のバランスなどを含めた骨の質的な強さを表しています。
骨の強さは、「骨密度」+「骨質」によって決まると考えられています。
そのため、骨密度だけでは見えない骨の弱りが存在することもあるのです。
骨粗鬆症になると何が問題なのか
骨粗鬆症で最も問題となるのは骨折です。
骨折によって活動量が減少すると筋力が低下し、さらに転倒しやすくなるという悪循環に陥ります。
特に注意が必要なのが、
- ・背骨の圧迫骨折
- ・手首の骨折
- ・太ももの付け根の骨折(大腿骨近位部骨折)
です。
なかでも大腿骨近位部骨折は、寝たきりや要介護状態につながることもあり、高齢者の健康寿命に大きな影響を与えます。
骨粗鬆症治療の目的は、単に骨密度の数字を改善することではありません。
将来の骨折を予防し、自分らしい生活を続けることが本来の目的なのです。
骨の老化を防ぐためにできること
骨の老化を完全に止めることはできませんが、その進行を緩やかにすることは可能です。
日頃から次のような習慣を意識しましょう。
まずは適度な運動です。
ウォーキングやスクワットなどの運動は骨に適度な刺激を与え、骨量の維持に役立ちます。
また、カルシウムだけでなく、たんぱく質やビタミンD、ビタミンKなどの栄養素をバランスよく摂取することも重要です。
さらに、日光を適度に浴びることでビタミンDの生成を促すことができます。
こうした生活習慣の積み重ねが、将来の骨折予防につながります。
骨の健康が気になる方は早めの検査を骨粗鬆症は早期発見・早期治療が重要な病気です。
特に、
- ・閉経後の女性
- ・家族に骨粗鬆症の方がいる
- ・身長が縮んできた
- ・背中が丸くなってきた
- ・骨折した経験がある
といった方は、一度骨の状態を確認することをおすすめします。
当院では、超音波骨密度測定(REMS法)を導入しており、放射線を使用せずに骨の状態を評価することが可能です。
必要に応じてレントゲン検査や血液検査も組み合わせながら、骨粗鬆症の早期発見と治療に取り組んでいます。
まとめ
骨の老化は高齢になってから突然始まるものではありません。
骨量は20〜30代でピークを迎え、その後は徐々に低下していきます。
しかし骨粗鬆症は自覚症状が少ないため、気づかないうちに進行してしまうことも少なくありません。
だからこそ、若いうちから骨の健康に関心を持ち、適切な運動や食事を続けることが大切です。
将来も自分の足で元気に歩き続けるために、今から骨の健康づくりを始めてみませんか。